什器ってどうやって決めればいいの?

店舗をやっている人ならば日常的に使う言葉である「什器じゅうき」ですがそもそもどういう意味の言葉なのでしょうか。どのようなものがあって、どうやって仕入れればよいのでしょうか。そういった知っている人は当たり前に知っているので、あらためて誰も説明してくれないことを、ここでは一から説明します。

什器じゅうきとは

回転什器

あらためて考えてみると、什器という言葉は日常生活で誰もが使うわけではないですよね。店舗をやっている人は日常的な言葉だと思いますが、店舗に関係ない人からするとめったに使わない・・・もしかすると漢字の読み方もわからないかもしれないです。簿記をやっている人が「什器備品」という仕分け名でかろうじて知っているぐらいでしょうか。
では什器じゅうきとは一体何でしょうか。なぜ什器と呼ぶのでしょうか。

什器は店舗で使われる家具や備品のことです。特定の商品をディスプレイする棚や台や入れ物や回転式のケースをさして言うことが多いです。スーパーでの青果を並べる台を青果什器といったり、アパレル店舗の業務で使われるものをアパレル什器と呼ぶこともあります。

元々は仏教のお寺の什物(じゅうもつ)や什具(じゅうぐ)から来ている言葉で、お寺が使う器具や日用品や生活用品を指します。これは什(数字の十と同じ)や、集まったものという意味の聚などからきていて、一つずつ数えるというよりも十を単位として数えるほど雑多ということから来ています。もとは中国の宋代に禅宗のお寺で使われた言葉が、のちに日常生活で使われる道具や食器や家具を指すようになりました。
元々は家具と同じ分野を指す言葉でしたが、店舗で使われるものを指すものとして特化してきました。これは、家具というのが文字通り家で使うものを連想させるのと、家で使う「家具」は基本的には一度設置すると固定するものだからだと思います。畳の部屋ではたしかに布団や卓は使うときだけ「設置」するという使い方をしますが、例えばタンスや鏡台などは置きっぱなしであると思います。そして食器などのように日常的に出し入れするものを私達は「家具」とはいいません。つまり、固定されたものが家具で、固定されてないものは食器だというように区別していったのではないでしょうか。
家庭内に比べると、店舗ディスプレイというのはもっと頻繁に出し入れをします。シーズン単位や、ひょっとすると一日単位でも棚を作ったりしまったりしますし、ディスプレイ用に用いる棚と皿を区別して置く必要もあまりありません。ですからこれは家具や食器とは別の言葉が必要になったのではないかと思います。
そしてそれはお寺での所作に似ていると昔の人が思ったので、什器という言葉が定着したのではないでしょうか。

什器の種類と目的

回転什器

ではどういったものを什器というのでしょうか。前節では歴史的経緯に着目して説明をしましたが、実際に店舗で什器と呼ばれているものを見ると、家具と同じようなものもあるけれども、家具という言い方にはなじまないものもたくさんあります。天井まで届く棚や、アクリル製のディスプレイ台や、ポストカードなどを入れておく回転式の棚などはあまり一般家庭にはないものでしょう。ですのでこれを店舗用家具という言い方をするのがはばかられたのだと思います。

  • 陳列台
  • ラック
  • シェルフ
  • ショーケース
  • ゴンドラ
  • ネットパネル
  • 平台
  • カート
  • ワゴン
  • ステージ
  • バスケットワゴン
  • スタンド
  • イーゼル
  • ハンガー
  • テーブル
  • カウンター
  • アクリルボックス
  • 商品ディスプレイ
  • カタログスタンド
  • アンケートボックス
  • 回転ネット
  • 卓上回転棚

などいろいろな種類の什器があります。たぶんここにあげたものよりももっとたくさんの種類があるでしょう。また特定の業界で使われる特殊なものもあるでしょうし、あるメーカーのみとか、ある店舗のみで使われる方言のような言い方もあると思います。

これは共通化がなされていないという言い方もできるのですが、本来の目的を考えればこれで良いのだと思います。その本来の目的とは「商品の魅力を引き立たせること」です。
什器は脇役であって主役ではありません。主役はあくまで商品です。客は魅力的な商品を購入するのであり、什器(ディスプレイ)に惹きつけられたとしても、什器を購入するわけではありません。ですので、什器は魅力的でなければいけないのですが、商品より目立ってはいけないという使命があります。

什器と店舗デザイン

回転什器

什器というものが店舗全体のデザインと一体不可分の関係にあることは分かりました。では店舗デザインとはそもそも何で、どうやって進めていけば良いものなのかを説明します。

店舗デザインは店舗の設計を意味します。ここでは店舗の建築上の設計は含まれないことが多いです。はっきりとした区分があるわけではなく最初から統一された店舗コンセプトがあってそれに沿って建物から作るという場合ももちろんあります。例えば、完全に見慣れてしまって逆に建築とかデザインという感じがしませんが、一軒家のコンビニエンスストアはまさにこれであると思います。
しかし多くの場合は、ビルの中に入っているコンビニエンスストアのように、ある程度所与の前提としての店舗に使える空間があり、それをどのようにしていくかということになるかと思います。これが「店舗の設計」を意味します。
具体的には、壁の色や店内の雰囲気を考えてデザインし、店舗の広さを計算して什器の配置やレイアウトを決め、それを図面に落とし込んだりします。
ここまでが設計士(デザイナー)の仕事です。この次は図面を元に実際に店舗を作る作業になります。これを施工と言います。作業を行うのは施工会社で、この内装工事が開始されることを着工と言い、完了することを竣工と言います。
しかし、施主からするとデザインというのは竣工をイメージしていますので、日常的な概念としては店舗デザインというのは施工まで含んでいると言えます。これはどの業界でもよくある一般的な言い方をしたときの定義と、プロの間の厳密な定義がちょっとずれているということですので、そこに鈍感だとトラブルのもととなりますので、ご注意ください。

店舗デザインの依頼

回転什器

店舗の内装の設計をするのは設計事務所で、この事務所に所属しているデザイナーや設計士が内装のデザインを考え、図面を起こします。上記の通り設計と施工は別の工程ですが、この2つを一つの事務所で行う設計施工事務所もあります。建築事務所が内装の設計を行う場合もあります。
店舗側(施主)としては、店舗デザインを依頼する時はこの設計事務所を探すことになります。個人で行っているところもあれば、数人のところ、多くの設計士を抱えているところもあります。

飲食やアパレルやサロンやクリニックなど特定の業種に強くその業種だけを行っている事務所もありますし、ロゴ制作やウェブページ制作など店舗プロデュース全般を手掛ける事務所もあります。
建築やウェブ作成など、デザインを伴う他の同種の作業と同じく、どの会社がいいとか、どの規模がいいとか、特別なセオリーはありません。よく相談し、施主の気持ちと予算とよく合うところを探すのが良いでしょう。

ではその探し方ですが、ウェブ検索でも口コミでも、これという候補の事務所を見つけたら、まずは打ち合わせをします。このときあらかじめ理想に近い店舗デザインのイメージを用意しておき、それを見せながら打ち合わせをすると良いでしょう。
打ち合わせ内容を元に、概ね1〜2週間でデザイナーが完成様相のスケッチや、パースと呼ばれる3D作成ソフトによる店舗のデザインを提案してきます。それを元にして施主とデザイナーとで提案をすり合わせていきます。何度か提案を行うこともあるでしょう。
また、複数のデザイン事務所に依頼を出してデザインコンペを行うこともあります。無料で行う事務所も多いですが、コンペフィーと呼ばれるスケッチやパースの代金は支払うほうが良いでしょう。結局のところ店舗デザインというのは既製品を低コストで仕入れるようなものではないわけですから、買い叩けば買い叩くほどよいとは言えないからです。

こうして施主のイメージをデザイナーの設計に落とし込んでいき、どのような個別の什器を用意するかを決めていきます。その際に、どのような什器が良いかを説明できると意思疎通がスムーズになりますし、什器の調達方法を説明できるとコストに関する有意義な対話ができます。「ここに回転什器を使ってほしい」などと、自分のイメージをはっきり伝えるほうがよいでしょう。